全国学力テスト「話す」
正答率12.4%について
● 安心して自分の気持ちや意見を伝え合うことができていますか
REMでは、意見を伝えるために必要な心の素地を整えながら授業を進めています。
すなわち、心理的安全を確保しながらレッスンを行う。これを常に意識しています。
授業をしていると、答え合わせや読解をするときに以下のような反応が出ることがあります。
・体がキュッとこわばっている
・腕やおなか、背中、脇のあたりを掻いたりする
・声がとても固くなる
・答えを導き出すときにずっと話し続けて止まらない
お家の方から学校での様子を聞いたり、生徒さんと何気ない話をするうちに、心の中に織り込まれていたものが見えてくることがある。
日本人の子どもは発言することが苦手、シャイである、間違ったことを人前で言いたがらないと言えるかもしれませんが、一方で英語圏の人たちの子どもへの声かけの違いに着目すると、もしかしたらスモールトラウマともとれる声かけをたくさん聞いているのではないかと思うことがあります。
「もう〇年生だよ」
「これくらいはできないと」
「これができなければ大変なことになるよ」など。
あるアメリカ人の指導者の未就園児さんに対する声かけで一番唸ったのは、ずっと左右を間違えてしまう子どもさんに、「そっちは左だよ、右の手を出すんだよ。反対の手だよ。」と言って出している手を直させるのです。何度同じことをしても同じように声かけをする。決して、「もうそろそろ覚えないとだめだ」と言わないのです。「何度言ったらわかるの」といった言葉も一切なし。全くないのです。何カ月でも、半年たっても声かけは同じ調子で変わらない。このまま直らなければ1年過ぎても同じ声かけだろうなと思えるくらい、調子が変わらない。
いつもその先生の声かけから気づきをいただいていました。同様に、カナダ人家族の声かけでも学ぶこと多数。
文化が違うと求められていることが変わる。指導者の声かけ、親子の間の話題が異なるのです。
そのカナダ人は、アメリカ人もそうですが、「どう思う?」と子どもに意見をよくたずねます。そして子どもの発言に対して「そうだね(同意している)」とか、「そんな風に思うんだね(同じ意見ではない)」などと応えるのです。「それは違うよ」とか、「お母さんはこう思う」などといった発言はなく、自然に会話が始まります。フィードバックを互いにしているような会話ですが、ディスカッションともとれるような内容の話をするのです。相手を論駁したり、自分は違う意見をもっていると強調することでもない、子どもたちの言葉を時間をかけてよく聞くのです。
英語圏における学習者への言葉かけやコミュニケーションの取り方に着目すると、英語の発話力をいかにして伸ばすかという長年の課題に対する糸口が見えてくるのではないかと思います。
英語圏のコミュニケーションの特徴として意識しなければならないことは以下の通りです。
・言語の構造として意見表明がしやすい。
・言葉や態度の中に上下関係を感じさせない。
・ひとに対する関心がある。相手がどのように考えているのかを知ろうとする。
・たっぷり時間をとって傾聴する。急がない、急かさない、話を聞くために十分な時間をとる。
以上の点を踏まえて2023年8月1日に新聞各紙で大きく報じられた全国学力テスト英語「話す」正答率12.4% というニュースについて考察を述べます。
● 全国学力テスト 英語「話す」正答率12.4% について
「話す」では出題された5問のうち、
5問すべて正解------0.4%
4問正解-------------1.8%
3問正解-------------4.2%
2問正解-------------9.6%
1問正解-------------20.9%
0問正解-------------63.1%
5問または4問正解した生徒は100人中およそ2名。
そして、1問正解または0問正解は、100人中およそ84名。
このニュースをテレビでセンセーショナルに報じていた時に思ったことは以下の通りです。
1) 対等な立場で発言する機会を子どもたちは生活の中で十分に持っているのか?
2) 学校で練習している会話や受け答えの表現はそもそも画一的で簡単に言えるようにコントロールしてはいないか?
3) 20秒、30秒などといった時間の枠の中で発言させようと試みたのは何故?
4) そのような短い時間の中で返答を返す練習は学校でしていないのでは?
5) 普段していない言語活動で評価を下し、「できていない」と指摘するのは生徒たちにとって酷ではないか?
6) そもそも英語圏の人たちとの会話では、発話するのに時間がかかったとしても(つまりペラペラでなくとも)内容を傾聴してくれるので時間制限は緩やかで良いのではないか?
7) 時間は気にせずじっくり発話させて内容を評価してもよかったのではないか?
8) テンポよく答えなければならないという価値観は入っていないか?
9) 英語圏では移民が多く、言語力が見劣りするからといってぞんざいな態度をすることは社会的にいわゆる一発アウトになると思うので急かさなくてもよかったのではないか?
10) 意見を述べる作業は、普段から考える作業をしていない者にとっては発話するまでにとてつもなく長く時間がかかるのではないか?
11) オンライン英会話授業の管理者をしていると、生徒たちは外国人講師の質問に対して答えるのに30秒以上かかることが往々にしてあるが、例えば朝ごはんには何を食べたか、週末にしたことについてどう思ったかなどといったシンプルな質問にさえ時間がかかるのには、なにか別の要素が絡んではいないか?
12) 普段からあまり考える作業をさせていない、または、考えて話させる時間を十分にとっていないのではないか?自分が本当に思っていることを話す作業を普段からしているのだろうか?本当に思っていることに比べて、少し体裁を整えてから発言する場合は、英語に変換するときに更にタイムラグが生じるのでは?
13) 意見を言うこと自体勇気が必要で、自分の考えを伝えることに慣れていない?
14) 学力テストを実施したとして、カリキュラムを大幅に軌道修正するならばこの「英語力のなさ」は次へのステップになるだろうが、そのような展望はあるのだろうか?もし政策変更なく学力テストの出題傾向が変わらないならば、生徒たちは塾などで試験対策をして正解を出せるように練習するのだろうか?海外に向けて発信したり、英語でディスカッションや意志疎通をする際には、そのような小手先のテクニックではなく、もっと深いところでマインドが変容するような活動をしなければならないのではないか?
15) 「書く」の正答率は24.1%であるということは、そもそも英語の構造をアウトプットできていないのだが、語順などを正しく整えて書くことができない生徒がどうやって口頭ですらすらと言えるのだろうか。
16) 英語は単語力だけでなく正しい語順が大切で、片言で込み入った内容は伝えられない。したがって、「とりあえず英語で言ってみよう」といった声かけは、挨拶程度の会話やコーヒーの注文を聞いたりするような英語力を身に着けることが目標ならよいのだが、それ以上を目指すとなると、アクセント・子音の発音・母音の区別・単語力・語順・即座の判断力など、英語でアウトプットするために必要なあらゆるスキルを習得する必要がある。
などなど。考えればきりがないほど考えが沸き上がってくるのです。
レインボー イングリッシュ メソッドでは、発音、単語、語順、英語で話すときのマインド、声の大きさ、息の乗せ方、堂々と話すこと、などなど多角的なアプローチからレッスンを行います。言語の技術と英語圏のマインドが合わさって「本当に伝わる英語」に一歩ずつ、一歩ずつ近づくレッスンをしています。